【経営者必見】医療従事者が早期離職する本当の理由|厚労省統計に見る「定着率向上」のカギは人間関係と職場環境の可視化

「苦労して採用した看護師が、半年も経たずに辞めてしまった」
「退職面談では『一身上の都合』と言われたが、本当の理由は別にあったのではないか?」
医療・介護現場の経営者や事務長、看護部長にとって、スタッフの早期離職は単なる人員不足以上の深刻な経営課題です。採用コストの損失(紹介手数料や教育コスト)に加え、現場に残された職員への業務負担増、そこから生じるモチベーション低下という「負のスパイラル」は、組織の医療・ケアの質そのものを揺るがしかねません。
なぜ、志を持って医療の世界に入った人材が、短期間で去ってしまうのでしょうか?
その答えは、退職届の「建前」には書かれていません。波風を立てずに去るために「家庭の事情」や「自分には合わなかった」という言葉を選びます。しかし、厚生労働省が公表する膨大な統計データの中には、彼らが職場を去ることを決意した「真の動機」が明確な数字として示されています。
本記事では、精神論や推測ではなく、公的データに基づいた「医療従事者が早期離職する理由」を徹底分析し、その理由を根本から絶つために経営層が明日から打てる具体的な対策を、実名病院の成功事例とともに解説します。
1. なぜ採用した人材が定着しないのか?医療業界が抱える構造的課題
医療・福祉業界は、他産業と比較しても人材の流動性が極めて高い分野です。まずは客観的なデータから、業界全体の「定着」にまつわる現状を把握しましょう。
1-1. 離職率14.6%・パート17.8%が示す「穴の空いたバケツ状態」の実態
医療・福祉産業の離職率は14.6%となっています。これは、1年間に約115万人もの職員が職場を去っている計算になります。
同時期の入職率は16.0%(約126万人)であり、数字上は入職者が離職者を上回る「入職超過」の状態です。しかし、これは裏を返せば、大量に採用し、大量に辞めていくという人材の新陳代謝が激しすぎる状態を意味します。
特にパートタイム労働者に限れば、離職率は17.8%とさらに高い水準に跳ね上がります(一般労働者は13.3%)。「採用活動に力を入れても、現場からは人が減っていく」という現象は、特定の病院だけの問題ではなく、業界全体が抱える構造的な課題と言えるのです。
1-2. 新人職員が直面する「リアリティショック」と早期離職の相関
経験者だけでなく、将来を担う新卒職員の定着も大きな課題です。
医療・福祉業界における大学卒の就職後3年以内離職率は38.8%に達しており、全産業平均と比較しても高い水準(全産業中4位)にあります。さらに高校卒に至っては46.4%、つまり約半数が3年以内に離職しているという衝撃的なデータがあります。
この背景にあるのが「リアリティショック(理想と現実のギャップ)」です。
実習や学校教育で「患者様一人ひとりに寄り添うケア」を学んだ若手が、いざ現場に出ると、人手不足による業務の多忙さ、効率優先の業務フロー、疲弊した先輩職員の姿を目の当たりにします。「ここでは自分の理想とする看護・介護はできない」という失望感は、早期離職の直接的な引き金となります。
この初期段階でのミスマッチを解消できない限り、採用活動は「穴の空いたバケツに水を注ぎ続ける」ような徒労に終わってしまうでしょう。
出典元:厚生労働省「新規大学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業)」
厚生労働省「新規高学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業)」
2. 厚労省データで読み解く「離職の本当の理由」

退職届に書かれる「一身上の都合」。これを鵜呑みにしていては、効果的な離職対策は打てません。統計データを用いて、その裏側にある「本音」に迫ります。
2-1. 「個人的理由(11.4%)」の裏に隠された組織の課題
厚労省の調査において、離職理由の区分を見ると、結婚・出産・介護などを含む「個人的理由」による離職率は11.4%であるのに対し、「事業所側の理由(経営上の都合等)」はわずか0.9%に過ぎません。
一見すると「個人の事情なら仕方がない」と思えるかもしれません。しかし、ここに大きな落とし穴があります。
重要なのは、「転職入職者が前職を辞めた理由」の内訳です。ここにこそ、退職時には言えなかった本音が表れます。
同調査によると、転職入職者が前職を辞めた理由(個人的理由を除く)の上位は以下のようになっています。
【女性の離職理由(上位抜粋)】
- 職場の人間関係が好ましくなかった(13.0%)
- 労働時間、休日等の労働条件が悪かった(11.1%)
- 定年・契約期間の満了(9.8%)
- 給料等収入が少なかった(7.1%)
【男性の離職理由(上位抜粋)】
- 定年・契約期間の満了(16.9%)
- 職場の人間関係が好ましくなかった(9.1%)
- 給料等収入が少なかった(8.2%)
- 労働時間、休日等の労働条件が悪かった(8.1%)
2-2. 「給料」よりも深刻な「人間関係」と「労働条件」
このデータから読み取れる事実は、多くの経営者の直感とは異なるかもしれません。
特に女性の割合が高い医療・介護現場において、離職の最大の要因(定年等を除く)は「給料が安いこと」ではなく、「職場の人間関係」なのです。さらに、「労働条件(休みが取れない、残業が多い、希望休が通らない)」への不満も、給与への不満を大きく上回っています。
「給料を上げれば人は定着するはずだ」という経営者の認識と、現場のスタッフが抱える「人間関係がつらい」「休みが取れず疲弊している」という実感の間には、大きなズレがあります。
これらは個人のわがままではなく、明らかに「組織のマネジメント課題」です。人間関係の調整や労働環境の整備といった対策を講じない限り、いくら賃金を上げても早期離職の連鎖は止まりません。
3. 「理由」を潰せば人は定着する:厚労省事例に見る3つの処方箋
離職の理由が「労働条件(身体的負担)」と「人間関係(精神的負担)」にあることが明確になりました。ここからは、これらの理由をピンポイントで解消し、劇的に定着率を改善させた医療機関の実証済みの成功事例を紹介します。
3-1. 【対・労働条件】「多様な正社員制度」と「インターバル」で身体を守る
「夜勤ができないなら辞めるしかない」という「0か100か」の選択を職員に迫っていませんか?
- 事例:社会医療法人天陽会 中央病院(鹿児島県)
同院では、かつて20%を超えていた離職率を改善するため、柔軟な「短時間正社員制度」を導入しました。- 成功の鍵: 制度の利用目的を「育児・介護」に限定せず、自己啓発や体調管理など、理由を問わず利用可能にした点です。
- 運用: 週32時間勤務を基本としつつ、夜勤を希望する短時間正社員には優先的にシフトを入れるなど、個別の事情に合わせた運用を行いました。
- 成果: 制度導入後、離職率は8.3%まで劇的に低下しました。一度退職した職員が「ここなら働ける」と戻ってくるUターン現象も起きました。
出典元:厚生労働省「短時間正社員制度 導入支援マニュアル(医療機関版):社会医療法人天陽会中央病院」
- 事例:社会福祉法人聖隷福祉事業団 聖隷三方原病院(静岡県)
「常態化していた日勤→深夜」勤務を改善するために、同院では「勤務間インターバル制度」を導入しました。- 科学的根拠: ノルウェーの研究では「11時間未満の休息が月に3回あると、翌月の病欠が約21%増える」とされています。
- 成果: 「日勤→深夜」という勤務形態を改善するために、勤務間インターバル制度の導入によって職員の睡眠と健康を守ることで、医療事故防止に努めています。
出典元:厚生労働省「医療業版勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル」
厚生労働省「医療勤務環境改善支援センター取組事例集:社会福祉法人聖隷福祉事業団 聖隷三方原病院」
3-2. 【対・人間関係】「評価しないメンター」が心理的安全性を生む
「人間関係」による離職を防ぐ唯一の方法は、職場の風通しを良くし、孤独を防ぐことです。
- 事例:社会医療法人ペガサス 馬場記念病院(大阪府)
同院は、新人看護職員の離職率が20%を超えていた時期に「メンター制度」を抜本的に見直しました。- 効果: 新人は「評価される恐怖」を感じずに、弱音や悩みを先輩に相談できるようになりました。この「ナナメの関係」が心理的安全性(Psychological Safety)を生み、平成24年度には新人看護職員の離職率0%という驚異的な成果を達成しました。
出典元:大阪府勤務環境改善センター「勤務環境改善事例:社会医療法人ペガサス 馬場記念病院」
3-3. 【対・メンタルヘルス】専門チームによる早期介入
現場の師長やマネージャーだけにケアを任せるのには限界があります。組織として専門的な支援体制を用意することが、職員への最強のメッセージになります。
- 事例:社会医療法人ペガサス 馬場記念病院(大阪府)
離職率が28%まで悪化した危機的状況を受け、「職員サポートセンター」を設置しました。- 取組: 臨床心理士を配置し、業務時間の5割を職員のカウンセリングやケアに充てる体制を構築しました。また、新卒看護師の消費者トラブルやハラスメント被害などの相談にワンストップで対応しました。
- 成果: 組織全体で職員を守る姿勢を示したことで、看護職員の離職率改善などの成果に繋がっています。
出典元:大阪府勤務環境改善センター「勤務環境改善事例:社会医療法人ペガサス 馬場記念病院」
- 事例:ベルランド総合病院(大阪府)
法人規模が拡大し、女性医師を含めた職員が増加したことで、多職種による「メンタルヘルスケアチーム」を発足させ、現場の悩みを早期に吸い上げる仕組みを作りました。 - 取組: 臨床心理士を配置し、院内外からの継続的なサポートを行った。また、新卒看護師の消費者トラブルやハラスメント被害などの相談にワンストップで対応しました。
- 成果: 組織全体で職員を守る姿勢を示し、カウンセリングを行った結果、相談した職員の三分の一が勤務を継続するようになった。
出典元:大阪府勤務環境改善センター「勤務環境改善事例:社会医療法人生長会ベルランド総合病院」
まとめ:データに基づいた「攻め」の定着支援を
医療従事者の早期離職は、個人の問題ではなく、組織の構造的な課題です。
厚生労働省の統計データが示す通り、多くの職員は「人間関係」や「労働条件」に悩み、職場を去っています。この現実に目を背けず、具体的な対策を講じることができるかどうかが、今後の病院・施設経営の明暗を分けます。
「うちの病院は人間関係が良いはずだ」「給料は相場より高いはずだ」という経営者の思い込みと、現場の実感とのズレが、サイレント退職(何も言わずに辞めていくこと)を生みます。
人が辞めない組織、人が育つ組織を作るためには、まず組織の現状を正しく「見える化」し、客観的な事実に基づいて環境を改善していくことが不可欠です。
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本記事で解説した通り、離職を防ぐには「人間関係」や「職場環境」といった目に見えない課題を可視化し、適切な対策を講じることが重要です。しかし、「現場の本音がわからない」「何から手をつければいいかわからない」とお悩みの経営者様も多いのではないでしょうか。
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■ Teichaku Markerの特長
- 離職リスクの早期発見: 独自のアルゴリズムで、退職につながる予兆を早期に検知します。
- 本音の可視化: 面談では聞き出せない「人間関係」や「労働環境」への不満を数値化します。
- 解決策までの伴走支援: 単なるツール提供にとどまらず、医療・介護現場を知り尽くしたコンサルタントが、研修やメンター制度構築などの具体的な改善策までサポートします。
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